被災地の成人式

※※※1月10日(火)※※※

昨日、全国各地で行われた「成人式の集い」の様子をテレビで観ましたが、相変わらずおふざけ半分やおしゃべりばかりの成人式が多かったようです。

しかし、「全く荒れない被災地の成人式」として、6年が経っても、復興は道半ばの被災地南三陸の成人式の様子も紹介されていました。

新成人の代表挨拶、誓いの言葉と式は進む中、参加者たちは静かに、じっと壇上を見つめていました。

市長の言葉です。 「やっぱり震災があってからですよ。成人式の雰囲気が変わったのは。 みんな、『バカなことはやってられねぇ』って思うようになったんでしょうね」

この日、成人式を迎えた参加者たちが被災したのは、中学2年生の時、 激しい揺れと町の中心部を飲み込んだ津波で、死者・行方不明者832人、建物の約6割が全壊しました。

新成人を代表して挨拶した町職員の浅野祐介さんの誓いの言葉(抜粋)を紹介します。 成人式は大人への仲間入りの式。 この様にありたいものです。

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私達はこの町で多くの喜びや悲しみを経験してきました。 同じ目標に向かい協力し合ったこと、同じ壁を共に乗り越えてきたこと。 数え切れないほどの経験や思い出が私達を成長させてくれました。

自分一人で抱えた孤独や不安、そして何にもぶつけることの出来なかった悔しさ。 ここにいる誰もが、違った苦しみや葛藤を抱えながらここまで歩んで参りました。

そうして自分自身で乗り越えてきた壁も、一つ一つが私達の成長へと繋がっているはずです。

私達一人一人の目に映ってきた様々な景色と心に刻まれてきた光景は、これから先も決して色褪せることはないでしょう。 そしていつの日かその思い出を糧とし、経験を誇りとしていきます。

人は互いに全てを理解し合うことはできません。それでも私達は、“人の苦しみや痛みを考え、人を思いやること”を怠ったことはありませんでした。

自分に出来ること、相手が出来ないこと、互いが互いを思いやり、共に支え合いながら困難を乗り越えてきました。

人を思う優しさと、何事にも立ち向かう強さは、この町が教えてくれました。 これから私達は、それぞれが選んだ新しい道を進んでいかなければなりません。

その道でまた、乗り越えなければならない高い壁や、困難な状況に出会うかもしれません。 それでも私達は前を向き、強く生きて参ります。

この町は決して南三陸町民だけで創られてきた町ではありません。 この町を思い、汗や涙を流してきた方々がたくさんいます。

町民の方々は、町を盛り上げることだけでなく、私達の成長を温かく見守り、常に支えて下さいました。

また、住む場所は違っていても、私達を思い、励まして下さった方々がたくさんいます。 私達はその多くの思いを繋ぎ、これからの南三陸町を新しく創り上げて参ります。

南三陸町に残った人も、離れなければならなくなった人も、南三陸町で培った経験や思い出を糧とし、これから互いに進むべき道を懸命に歩んで参ります。

多くの壁を共に乗り越えたかけがえのない仲間と、今こうして南三陸町に再び集い、新成人を迎えることができたこと、私達を大きく成長させてくれた南三陸町に感謝申し上げます。

今、社会の中で、多くの人々や町が、様々な状況に置かれ、困難な状況に立ち向かっています。

これまで支えられ、助けられることが多かった私達はこれから、この町で得た経験と、これから互いがそれぞれの道で重ねる経験を最大限に活かし、社会を支え、大きく貢献して参りますことをここに決意し、誓いの言葉と致します。 □  ■ □

本当の成人式に直球勝負。