儲けて何が悪いのか

※※※7月23日(土)※※※

現在放映中のNHKの朝ドラ「ととねえちゃん」、いよいよ、女性のための雑誌「暮らしの手帳」を創刊するところまできました。

「暮らしの手帳」の編集長として辣腕を振るった人物が、花森安治さんです。 その花森氏の言葉です。

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儲けて何が悪いという、その通りだ。

他人の不幸を踏み台にして肥ったりせず、人間の弱点につけこんで売り上げを伸ばしたりもせず、僕らの暮しに役立つ良い品だけを作ったり、売ったりしている限り、儲けて悪はずがない。

そんなふうに考えて、仕事をしている会社や人間だったら、大いに儲かるのが、本当なのだ。

しかし、今、そんな会社や人間が、どれだけあるというのか。  人の暮しに役に立たなくても、人の暮しをダメにすることが分っていても、売れさえしたらそれでいい、売れるためなら、どんなことでもする、そんな会社や人間ばかりだ。

そんな会社や、そんな会社の後押しをした政府が、今、日本の繁栄を作りあげてやったのは、自分達だと胸を張っているのだ。

そうなのか、本当にそうなのか。それなら、見るがいい。そんな企業を後押しにしてきた政府よ、見るがいい。

誇らしげに、君たちが作り上げたという、その世の中を 目をそむけないで、はっきりと見るがいい。 繁栄とは、何か。 豊かな暮しとは、何か。

君らが狂気のように作り出す工場の煙で、僕らの空はいつも重たく曇ってよどみ、君らが平然と流し続ける廃液のために、僕らの川と海は、いつも暗く腐って流れようとはせず、君らの作ったものの出すガスのために、僕らの木と草は、夏に枯れて、春にも花をつけない。

君らのために、僕らのまわりから、緑は失われ、君らのために、僕らは今、ちっぽけな土地に、ちっぽけな家を建てる望みさえ絶たれ、君らのために、僕らは今、食卓にのぼらせる魚にも毒はないかと心を痛める。

しかし、悔しいことだが、こんなひどい世の中にしてしまったのは、君らだけの罪ではなかったのだ。

悔やんでも悔やみきれないのだが、君らが狂ってしまって、血眼になって、儲けだけに走るのを、だまって見ていて、止めようとしなかった、僕らも狂っていたのだ。

僕らは、もうずいぶんと長く生きた、僕らは、もういい、僕らは、もうどうなってもいいのではないか。

僕らは、自分の子供のために、そのまた、子供のために、僕らだけは狂った繁栄とわかれて、そこへ戻ろう。 そこから出直して、僕らは、自分の作った罪を、自分の手であがなってゆこう。

僕らの暮しを脅かすもの、僕らの暮しに役立たないものを、それを作ってきた僕らの手で、今、それを捨てよう。 ~ ~ ~ ~ ~

今や政府の御用放送局化したNHKの中で、唯一、これに楯突いるのは「朝ドラ」だけかも知れません。

マスコミ精神に直球勝負。