変形労働時間制反対

12月18日(金)

11月定例県議会が閉会しました。最終日の今日は、知事提案や人事案件他の採決がありましたが、それに先立ち議案に対する賛成・反対討論があり、私は「1年単位の変形労働時間制導入の中止を求める意見書(案)」について、賛成の立場で討論を行いました。教員の働き方改革、長時間労働を解消するための法案とされていますが、全くの悪法です。これでは、教員の働き方改悪と長時間労働の追認を進めるだけです。今後、大きな社会問題となり、大きなうねりとなると思います。以下、討論文を掲載します。

◆チームしが県議団を代表し、意見書第17号「1年単位の変形労働時間制導入の中止を求める意見書(案)」について、賛成の立場で討論を致します。

 去る、12月4日、参議院本会議で公立学校教職員の業務時間削減のための上限の指針化と休日まとめ取りのための1年単位の変形労働時間制の導入を目的とする「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律(案)」、いわゆる「給特法改正案」が成立し、1年単位の変形労働時間制については、令和3年4月1日からの導入が可能となりました。

 ご承知の通り、我が国における教員の業務は長時間化しており、近年憂慮すべき実態にありますが、そもそも、公立学校の教員については、いわゆる「給特法」において給料月額4%に相当する教職調整額を支給する代わりに、時間外勤務手当及び休日勤務手当を支給せず、また、超過勤務4項目、校外実習、学校行事、職員会議、非常災害等を除いては、時間外労働を命ずることができない建前になっています。そのため、恒常的な時間外労働が生じているにも関わらず、これらは、「労働」ではなく、教員の自発的な業務の遂行であるとされていたことから、使用者による労働時間管理が疎かになり、教員に過大な業務を命じる結果を生み、これが長時間労働が蔓延する原因となったと指摘されています。

 学校教育の中で、教育の成果を維持し、子どもたちに対するきめ細やかな教育を行うためには、教員のこれまでの働き方を見直し、長時間労働の是正を実現しなくてはなりません。
 教員の長時間労働の是正を目的としたとされる本改正案の大きな柱は、業務時間削減のための条件整備と上限ガイドラインの指針化を図ること、そして、「休日のまとめ取り」を実現化するために1年単位の変形労働時間制を導入することの2点ですが、私達が今、考えなければならないことは、この2つの柱がその対策となり得るのか否かということです。
 
 結論から言えば、本改正案は総量としての労働時間を削減する効果はなく、むしろ、繁忙期の所定労働時間が増えることで、これまでよりも繁忙期の労働時間が増大し、過労死等のリスクが一層高まることが懸念されています。さらには、本制度が導入されることにより、給特法及びこれに基づく現状の抜本的な見直しと改善を図るという、本来行われるべきことが後回しにされる恐れさえあります。

 1年単位の変形労働時間制の導入について、政府与党は、夏休み期間中などに休日をまとめ取りできるようにするために、本改正案が必要であると説明していますが、現在の法制度においても休日のまとめ取りをすることは十分に可能であり、これを推進するためには、そのための法律や条令の改正を行えば良いだけであり、本制度を導入する必要性は認められません。

 地方公務員である教員の労働条件は、基本的には条例で定められることとされており、条例で「8月に連続した特別休暇を付与する」と定めれば、「休日のまとめ取り」は可能であり、わざわざ、労働基準法(労基法)の「1年単位の変形労働時間制の導入」を持ち出す必要性はありません。逆に繁忙期の勤務時間が延長されることで、現在の長時間勤務が追認・黙認されてしまうことが懸念されます。加えて、本改正案では、労働基準法上の1年単位の変形労働時間制が要件とする労使協定ではなく、条例により適用対象等を定めることとなっており、当事者である教員の意向に拘わらず、一方的に所定労働条件を割り振りすることが可能となります。
 
 本制度は労働者の意見を反映させるために労使協定の締結を要件とした労基法の趣旨を逸脱するものであり、公立学校の教員に最低基準を下回る働き方を強いるものでもあり、おおよそ、働き方改革といえるような改正案ではありません。また、この度の変形労働時間制は、1日単位、1週間単位の労働時間規制の「枠」を取り払う、危険で例外的な制度でもあります。このため、労基法では、対象者や対象の労働時間などを詳細に定め、監督機関である所轄の労働基準監督署への届け出ることが義務づけられており、恒常的な長時間労働が行われている職場では導入できないとされています。

 この様な課題を内包する本制度導入に対して、現場の教員を始め、多くの労働者から反対の声が上がっているにも拘わらず、国会ではこれらの声を聞くこともなく、また、本制度を導入する必要性・相当性を明らかにすることもなく、本「給特法改正案」を可決・成立させました。
 しかし、これまで列挙した課題からも、本制度を導入すべきでないことは明白であり、真に行わなければならない制度改善から目をそらしているにすぎません。

 私達は、教員の長時間労働改善のために必須となる業務負担軽減や教員増員への取り組みを強め、給特法の見直しを含めた抜本的な制度改善を行うことこそが、真に必要であり、今般の1年単位の変形労働時間制の導入は中止すべきと考えます。

 以上、良識ある議員各位のご賛同を強く求め、意見書第17号「1年単位の変形労働時間制導入の中止を求める意見書(案)」への賛成討論と致します。

変形労働時間制導入反対に直球勝負!