大戸川ダム問題②

※※※2月9日(金)※※※

(5) 一定の水量を河川に閉じ込める「定量型治水」ではなく、被害を最小化できるように「非定量型治水」(=流域治水)を進めないと、温暖化などによるいわゆる「超過洪水」(想定を超える洪水)に対処できない。

このような河川政策の基本哲学の転換が求められているなかで、今回の大戸川ダムは古典的な「定量型治水」からみても必要性が説明できない、という河川工学者の知見を尊重する。

大戸川ダムの下流には天ケ瀬ダムがあり、その下流に宇治川と木津川、桂川が交わる三川合流地点があるが、これまで国が主張してきた「枚方地点での計画規模の洪水を抑えるために大戸川ダムが必要」という論拠は、天ケ瀬ダムの二次放流により対応可能であり、大戸川ダム建設は下流にとっては意味がない。

この二次放流により対応可能であることを2008年当時に発見したのは、滋賀県職員であり、滋賀県職員の能力が高く評価された。

特定水量を河川に閉じ込めるのではなく、命を守る住民目線の流域治水政策」を全国はじめて条例化(2014年3月)した滋賀県の実績は、県幹部は勿論、河川技術者の力を結集したものである。

(6)ダム建設と河川の生態系や環境保全について、以下の点が重要である。

①人為的なダムだけでなく、地形的・自然史的構造を大自然とした時に自然の貯留水域(琵琶湖、亀岡盆地など)に生き物がどう適応してきたのか、未解明の点が多い。

②琵琶湖のように40万年も今の湖盆を維持してきた琵琶湖・宇治川・大戸川をセットとしての河川生態系は、その個性をもっともっと解明すべきこと。

③特にプランクトン組成や水生昆虫などに大きな個性がみられ、生物多様性のホットスポット(生物多様性が高く人類による破壊にさらされている場所)がたくさんあるということ。

④その水系全体の中で、琵琶湖・宇治川・大戸川をセットとしての河川生態系とその個性をもっともっと解明すべきこと。

⑤大戸川ダムがこれまで長い年月大量に運んできた土砂が下流の宇治川の水生昆虫の生息環境を作っており、これがダムで止められると巨石ばかりの河川生態系となり影響は計り知れないこと。

治水安全度の評価軸を、「流化能力から被害軽減度へ転換すべき」とし、「防災から減災へ」(防災研究所の研究者談)との指摘を肝に銘じたい。

大戸川ダム問題に直球勝負。