暴行罪と傷害罪

※※※11月28日(火)※※※

この度の大相撲の「日馬富士問題」、新聞やテレビでは盛んに「暴行事件」として報道されていますが、私はこれに違和感を覚えます。

そもそも、「暴行行為と傷害行為」は全く違いますので、当然、「暴行罪と傷害罪」とは全く違います。 日馬富士関も白鵬関も、そして、報道も「あま」い

ですから、貴ノ岩関の身体状況が、現在、新聞で報道されている通りなら、日馬富士の出所進退は自ずと決まります。

暴行行為」とは、力の行使自体を指し、これにより、相手の身体や生理機能に障害が、①生じた場合と ②生じない場合があり、②の場合は「傷害行為」となります。

つまり、「暴行罪」は、暴行を加えたが傷害(けが)が生じなかった時に成立し、「傷害罪」は、暴行を加えて傷害(けが)が生じた時に成立します

傷害という結果が生じたか否かが、暴行罪と傷害罪の分かれ目です。

傷害のけがの程度・内容は、嘔吐、失神、むちうち症、病気の感染、意識障害を伴う急性薬物中毒の症状などがあり、その代表的な証拠は、医師の診断書です。

また、最近では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)がケガ(生理機能の傷害)に当たるかが問題とされています。

最高裁は、一般的な判断ではなく事例に即した判断ではありますが、一時的な精神的苦痛やストレスを感じたという程度にとどまらず、医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現した事案において、刑法にいう傷害に当たると認めています。

暴行罪は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められているのに対し、傷害罪は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です

暴行罪の法定刑、「2年以下の懲役」とは、1か月以上2年以下の懲役を意味し、「30万円以下の罰金」とは、1万円以上30万円以下の罰金を意味します。

傷害罪の法定刑、「15年以下の懲役」とは、1か月以上15年以下の懲役を意味し、「50万円以下の罰金」とは、1万円以上50万円以下の罰金を意味します。

この様に、傷害罪の法定刑が、1か月から15年まで、非常に幅の広いものになっていのは、けが(生理機能の障害)といってもその程度はピンからキリまであるので、刑の重さも幅を持たせて、実際の事件に応じて決められるようにしてあるからです。

傷害罪の故意は、人の生理機能を傷害することを認識・認容していた場合に認められ、殺意があった場合を含みません。

①殺意を持って行為に出て、結果的に殺害に至った場合は「殺人罪」、殺害に至らなかった場合は「殺人未遂罪」、②殺意を持たず行為に出て、結果死亡させてしまった場合は「傷害致死罪」が成立します。

今回の日馬富士関の場合、もし、貴ノ岩関が死亡していたら②に該当し、調査の結果如何によっては、①のいずれかにも該当する大事件でした。

このことを正しく報道すべきだと感じます。 もう一度、書き残しますが、日馬富士関も白鵬関も、そして、報道も「あま」い

暴行・傷害に直球勝負。