勝負師のメンタル

※※※1月31日(火)※※※

想像していた以上に、第72代横綱「稀勢の里」の話題が沸騰しています。 

稀(まれ)にみる勢いのある力士という意を込めてつけた四股名(しこな)「稀勢の里」、良い感じです。

土俵の上では常にポーカーフェイスですが、実はこれは生来の気の弱さを隠すカムフラージュであり、意図的に行っている作戦でもあります。

最近の若いアスリートは感情をストレートに表現する様で、例えば、卓球や体操の選手などは過剰とも思えるガッツポーズをしています。

若い世代はそれを是とするのでしょうが、私達はこの様な態度をとってはならないと教えられてきました。 

私たちの学生時代は、ヒットやホームランを打ってもガッツポーズは厳禁でした。

2006年(平成18年)の第88回全国高校野球選手権滋賀大会の決勝戦で、滋賀学園高校に勝利し甲子園出場を決めた瞬間の私の厳しい顔が話題になったことがあります。

何故、あの瞬間、嬉しそうな顔をしなかったというかできなかったのは、選手たちの喜び方に、決勝戦を戦った相手校・選手への畏敬の念、思いやりが感じられなかったからです。

勝者が嬉しさを爆発させる裏には、敗者の辛い思いがあります。 

だから、あの時、優勝直後に指導者の「胴上げ」は、絶対にさせないという決意の怖い顔でした。

剣道では、1本が決まっても飛び跳ねたり、ガッツポーズをしません。 

蹲踞(そんきょ)まで、お互いにきちんと礼を尽くします。 それが、戦った相手に対する尊敬の態度です。

勝負師が勝負の場で一喜一憂する事は決して得策ではありません。 

勝負の場はある意味心理戦でもある訳ですから、自分の本心を一々露呈して得をする事はありません。

多くの大リーガーが尊敬する大リーガー「イチロー」も、決してガッツポーズなどはしません。

「自分の本心を一々露呈しない」、そのことを稀勢の里は土俵上で徹底的に貫いている、稀に見る無骨な力士であるとも言えます。

19年ぶりの日本人横綱・稀勢の里には、是非、相撲史に残るような名横綱になって欲しいと思います。
 
武骨な横綱に直球勝負。