雇用状況の真実

※※※12月23日(土)※※※

2017年11月12日付け毎日新聞「時代の風」:政府の経済財政運営(藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員)から抜粋

~ ~ ~ 「若者の雇用は空前の改善を見たのだから、アベノミクスは成功だ」とする人々が増えている。

しかし、消費も設備投資も増えない状況下で、唐突に雇用だけが改善するという現実に矛盾を感じないようであれば、経済を語る資格はない。

若者の雇用改善は人数の多い昭和20年代以前生まれの世代(団塊の世代)の退職に伴う、人手不足の補充のために生じた自然現象であり、経済政策の成果ではない。

総選挙の前後を通じ、この単純な事実を無視するポジショントークが目に余ったので、再度、客観的な数字を示す。

民主党の菅政権下の2010年10月1日と、アベノミクス3年目の15年10月1日に行われた国勢調査の比較である。

2015年に30歳未満(1985年10月以降の生まれ)の世代の就業者(非正規含む)は、5年の間に428万人増えた。

しかし、2015年に60歳以上(55年9月以前の生まれ)の世代の就業者は、この5年間に515万人減っている。 また、50~59歳の世代の就業者も34万人減った。

雇用主側から言えば、意欲的な新卒採用にもかかわらず、加齢して退職していく中高年の穴を埋めきれなかったということである。

注目すべきは、15年に30~49歳の世代の就業者も、男性に限れば4万人減ったことだ。

同世代の女性の就業者が56万人も増えたのは、出産後の職場復帰を促す「女性活躍」政策の成果だが、90年代半ばの就職氷河期に苦労した団塊ジュニア世代の男性には、「アベノミクスの恩恵」は及ばずじまいになっていることが分かる。

日本の若者の雇用動向は、折々の新卒就職の世代と退職者世代の数の違いに左右される。 そして、74年を境に出生者数が半減にまで至った日本では、退職者数を新卒者数が補えない事態は今後とも続く。

つまり、「若者の就職は容易だが、個人消費は増えず設備投資も促進されない」という状況が、延々と続くということだ。 ~ ~ ~

先の選挙で公約もせず、触れもしなかった増税を連発する現政権の無定見ぶりに、野党各党は、きちんと反論すべきデータをもって対峙して頂きたいものです。

日本経済の真実に直球勝負。